洋上でクジラを待つ
那覇の泊港から20〜30分ほどの慶良間諸島の周辺、紺青色の海の上をたゆたっていたクルーザーが、急にスピードを上げました。向かう先には、霧のような水しぶき。「2頭いるね!」。揺れに参っていたことも忘れ、船長の言葉にじっと目を凝らします。このあたりでは、冬から春にかけて南の海で過ごすクジラの姿を見ることができるのです。ブロウ(クジラの呼吸)が上がったポイントに着くと、息を止めるように船のエンジンもストップ。波に揺られながらじっと待っていると、不意に船の横で「ブシューッ」と水しぶきが上がり、海の中から大きな身体が海上にジャンプ! 船上に「わあっ」と歓声が上がります。そんな人間たちにお構いなく、クジラはゆったりと泳ぎながら水面に2、3度潮を吹き上げると、黒くつやつやした背としっぽを見せて海へ潜っていきました。